研究内容

最先端技術を駆使して、ナノ材料が秘めるポテンシャルを最大限に引き出し、 新しい機械材料を生み出す!

グラフェン、カーボンナノチューブなどのナノカーボン材料は優れた特性を有するものの、実際の製品に活用されている事例はごくわずかです。材料コストが高いこともそうですが、ナノ材料であるがゆえにファンデルワールス力により凝集し、分散が極めて難しいことに起因しております。
荒尾研究室では、溶けるが如く分散するナノシートを生み出すことに成功しており、現在はできるだけ高品質なナノシートを低コストで量産化し、そして高機能なナノコンポジット材料を創り出すことにチャレンジしております。ナノシートを活用した高強度プラスチック、高熱伝導材料、透明導電膜、機能性インクの開発を進めております。

1. ナノシートの低コスト量産化技術

黒鉛(グラファイト)を液中で剥離することで、薄層グラフェンを取り出すことができます。しかしながら、現実的には剥離度が低くてグラフェンへの変換率は1%/hでした。我々の研究室では黒鉛をボールミルで粉砕し、その際にメカノケミカル反応を引き起こさせることで、黒鉛端部に化学物質を吸着させることに成功しました。エッジ改質黒鉛を液中で超音波させることで、溶けるように剥離分散することを見出しました。わずか5分程度の超音波で、グラフェンの収率は50%程度まで向上します。このメカノケミカルプロセスを最適化することで、可溶化グラファイトを低エネルギー、低コストで量産化させます。現在は1㎛以上の大粒径のナノシートの生産に挑戦しております。

ボールミルによる黒鉛のメカノケミカル処理 ボールミルによる黒鉛のメカノケミカル処理
グラフェンが極性溶媒に溶けるが如く剥離分散 グラフェンが極性溶媒に溶けるが如く剥離分散

2. 繊維強化プラスチックのナノ界面による高強度化

繊維強化プラスチックはその高い強度と軽量性から、航空宇宙分野や自動車分野への実装が進んでおります。強化繊維プラスチックは下図のように、10㎛程度の直径の強化繊維とプラスチックからなる材料であり、繊維方向とその直交方向で機械的特性が著しく異なります。また、繊維と母材の間には界面層と呼ばれる100~500nmの層があります。この界面層の力学的性質はまだよく分かっておりません。このナノオーダーの界面層にグラフェン等のナノフィラーを添加することで、繊維強化プラスチックの更なる高強度化にチャレンジしております。

界面層を含む繊維強化プラスチック 界面層を含む繊維強化プラスチック
強化繊維へのグラフェンコーティング 強化繊維へのグラフェンコーティング

3. 次世代高強度シート材料の開発

貝殻の真珠層は、炭酸カルシウムの板がポリマーで接着されている構造となっています。炭酸カルシウムという、脆く弱い材料を用いているにもかかわらず、真珠層は割れにくく強靭な材料です。これは板が層状に配向しており、亀裂がトラップされて進展しにくいためだと言われております。この構造から学び、グラフェンなどの高強度なナノシートを用いて層状ナノシート材料を作製することに挑戦しております。高強度化、高熱伝導化には、グラフェンの厚み、直径制御と、選択するポリマーの相性が重要であり、ナノ構造を制御することで、既存の軽量高強度材料を上回る新規材料を創出します。

真珠層の断面構造 炭酸カルシウムのシートはポリマーで結合されている 真珠層の断面構造
炭酸カルシウムのシートはポリマーで結合されている